2022/07/23

 

 小池昌代の書評集『井戸の底に落ちた星』(まず表紙がいい。秋山泰計の<鳥をねらう猫を抱く少女>という版画。)に入っていた短編小説「もやりと漂った古本の匂い」が良い。大雑把に言うと「わたし」と「大学を出たばかりの国語の先生」の百合、みたいな感じ。「わたし」は熱心な「先生」に気に入られているが、「わたし」はそんな「先生」を「黒板を背に、教師の役を演じる女優のごとく、」と一歩引いて見つめている。。「先生」が「わたし」におすすめする本は「ほとんど読んだことがあるものばかり」。「わたし」はすでに「先生」の凡庸さに気づいているけれど、「先生」は気づかれていることに気づいてない(し、多分そもそも自分の普通さや正しさとかを疑ったことがなさそう)。こういうすれ違いはグッと来る。